自転車等専用道路の整備
1 LUUP死亡事故発生
弁護士法人心東京法律事務所の小原です。
今回は、異種交通について考えてみます。
今月2日、都内で痛ましい交通事故が発生しました。
現場は都内の交差点。
右折する軽貨物車が自転車横断帯を走るLUUPと衝突し、LUUPを運転していた方の死亡が確認されました。
改正道路交通法が令和5年7月1日に施行され、LUUPをはじめとする電動キックボード等の新たなモビリティが「特定小型原動機付自転車」として分類されて以降、都内公道における特定小型原動機付自転車の死亡事故は、初めてのことです。
2 異種交通の危険性
今回の事故では、LUUPが自転車横断帯を逆走した可能性が指摘されています。
確かに、逆走は事故を誘発する危険行為であるとともに、そもそも特定小型原動機付自転車は自転車横断帯の走行が禁止されています。
しかしながら、今回の事故はいわゆる右直事故ですから、仮に、LUUPではなく普通自転車が交通ルールを守って自転車横断帯を走行していたとしても発生し得たのではないでしょうか。
我が国では、車道の地面の左脇が青色に塗られただけの自転車専用通行帯が多く、自動車道と物理的に隔てられた自転車道の整備は発展途上です。
そのため、自転車や特定小型原動機付自転車(以下、「自転車等」という。)は、より危険性の高い四輪車と同じ道を走行しなければなりません。
今回の事故の本質的な原因は、四輪車と自転車等との異種交通ではないでしょうか。
3 歩行者の安全確保に比重が置かれた政府の道路政策
内閣府に置かれた中央交通安全対策会議は、交通安全対策基本法に基づき、5年おきに交通安全基本計画を作成しています*1。
同計画は、人優先の交通安全思想の下、歩行者の安全確保を非常に重要視しています。
特に、平成19年改正道路交通法において、自転車は「車両」という原点に立ち返り、自転車が例外的に歩道通行できる要件等が明確化されて以降、政府の政策は、一貫して自転車の歩道通行を制限し、もって歩行者の安全を確保するという方針をとっています。
4 異種交通解消のためのハード整備が不可欠
確かに、自転車等と歩行者との異種交通は、歩行者にとって危険であり、歩行者の安全確保のためには、自転車等を歩道の外に出すことが有効です。
しかしながら、外に出された先が四輪車の走行する車道であれば、今度は自転車等にとって危険な異種交通状態を生んでしまいます。
歩行者の安全確保が重要なことは誰も否定しません。
しかしながら、自転車等の安全確保が重要なこともまた、誰も否定できない。
交通ルールの徹底、ヘルメット着用の努力義務、交通違反の罰則強化、保険加入等のソフト面の施策だけでは限界があるでしょう。
実際、全体の交通事故件数に対する自転車関連事故件数の比率は増加傾向にあり、自転車関連の死亡・重傷事故の相手当事者は、その約75%が自動車でとなっています*2。
歩道とも自動車道とも物理的に隔てられた自転車等専用道路の整備というハード面の施策も急がれます。
*1 [内閣府HP]交通安全基本計画(最新は第12次計画で計画期間:令和8年度~令和12年度)
*2 [警察庁HP]自転車は車のなかま~自転車はルールを守って安全運転~



