1 自賠責保険の支払基準額の推移
弁護士法人心東京法律事務所の小原です。
前回に引き続き、今回は、自賠責保険の傷害慰謝料の支払基準額の推移を確認します
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弁護士法人心東京法律事務所の小原です。
前回に引き続き、今回は、自賠責保険の傷害慰謝料の支払基準額の推移を確認します。
精神的苦痛を金銭評価した傷害慰謝料は、治療費や休業損害と異なり、物価水準や賃金水準から直接的に影響を受けるべきものとも言い切れません。
もっとも、前回お示したとおり、自賠責保険審議会は、傷害慰謝料の改定判断に当たって、物価水準や賃金水準も根拠としているのではないかと思われます。
そこで、今回は、傷害慰謝料の⓪実績値の推移に対して、①物価水準(*1)に連動させた場合の推移と②賃金水準(*2)に連動させた場合の推移を、それぞれ試算しました。
なお、項目同士を比較しやすいように、いずれも1970年の数値を100とした場合の指数を追うことにします。
前回と異なり、1970年の数値を指数の基準値とした理由は、1969年以前の消費者物価指数(CPI)が取得できなかったためです。
2 結果
試算の結果、下記グラフのとおり、①物価連動試算値は⓪実績値を下回る一方、②賃金連動試算値は⓪実績値を上回りました。
そこで、さらに、物価水準と賃金水準の両方と連動させる場合の推移について考えました。
具体的には、傷害慰謝料を物価水準のα%、賃金水準の1-α%と連動させて改定するとした場合に、当該試算値を⓪実績値と近似させるためには、ウェイトαを何%とすればよいかを考えました。
その結果、⓪実績値の指数と試算値の指数との残差平方和を最小にするαは48%と分かったため、⓪実績値の推移に近似するのは、③物価水準の48%、賃金水準の52%と連動させて改定する場合の試算値の推移であるということが分かりました。
3 考察
上記の試算から、傷害慰謝料の支払基準額について、政府は、物価水準の推移を上回る増額改定をしてきた一方で、その改定幅は、賃金水準の推移を下回ることが分かりました。
加えて、③両水準をほぼ同じ比重で考慮すれば、⓪実績値に近似することも分かりました(もちろん、政府が改定判断に当たって、両水準を同じ比重で考慮に入れているのか否かは分かりませんので、あくまで結果論に過ぎません)。
前回見てきたとおり、政府は、休業損害に比して、傷害慰謝料の増額改定には慎重な姿勢を取っています。
しかしながら、物価水準の増大を上回る比率で傷害慰謝料の支払基準額を増額させてきたことから、それなりに傷害慰謝料の増額を実現してきたこともまた事実と言えます。
*1 [MIC]消費者物価指数_中分類指数(1970年~最新年)
*2 [JILPT]毎月勤労統計調査